TECH PARK | 福岡市 天神にある、テクノロジーと遊ぶアフタースクール(学童保育)

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3Dファブコンテストで特別賞を受賞しました!

このたび、テックパークに通う中学1年生の小野侑誠くんの作品「float gyration」が、3Dファブコンテスト2017「未来の楽器」部門にて、見事に特別賞を受賞しました!
いつもテックパークに来てくれている生徒の活躍は本当にうれしく、喜びを噛み締めながらこのエントリーを書いています。
この記事では、今回の応募をサポートした私から、作品制作から受賞までの流れをお伝えしたいと思います。

 

はじまりは興味から。


侑誠君がこのコンテストに挑戦したいと言い出したのは、夏休みの終わり頃。これまで侑誠君は、彼自身の希望もあって、テックパークでは主にプログラミングを使っていろいろな遊びに挑戦していました。テックパークには、3Dモデリングや3Dプリンタと触れ合える環境が用意されていますが、侑誠君の場合はプログラミングがメインで3Dに関しては知識も経験もない状態。それなのにどうして彼がこのコンテストにエントリーしようと思ったのかと言うと「未来の楽器ってどんなものだろう?」という興味が芽生えたからだったようです。

 

イメージを具体化する。


未来の楽器。正解がないゆえに、これは非常に面白く、そして難しいテーマだったと思います。それが一体どんな姿かたちをしているのか?あるいはどんな音を奏でるのか?侑誠君がイメージを具体化できるように、いろいろな角度から質問を投げかけブレインストーミングを重ねました。
すると「DJってなんだか未来的だしかっこいい」というイメージから、それを発展させた楽器を作ろうという結論に。
アイデアを具体化できるよう、次はイメージをスケッチに落とし込みます。思いついたアイデアからものを作ろうと考えた時には、この作業が非常に重要です。イメージをスケッチしようとすると、感覚だけで「なんとなくおもしろそう」とか「なんとなくかっこよさそう」と思っていた部分に、整合性や理屈を合わせて考えていかないと、そのスケッチは崩壊してしまいます(例えば、1㎥の箱の中に100㎥の球体が収まる様子を“スケッチ”するのは不可能です)。イメージに実現可能性を与える作業。ここで彼は、試行錯誤を繰り返しながら、円盤を回転させることで音を奏でる楽器を見事にスケッチしました。

想像したものがが「現実」になるよろこび


具体的なイメージを得られたら、あとは簡単です。3Dモデリングソフト(今回は fusion360 を使いました)や、3Dプリンターの使い方、あるいは電子回路など、この楽器を現実とするのに「必要な知識」を身につけられるようサポートするだけ。テックパークには、そのための機材とスタッフとそして環境がしっかり整っています。
実は、このステップこそがもっとも重要だとお考えの方が思いのほか多くいらっしゃるのですが、本当に大切なのは、興味を引き出すことと、その興味を具体的に掘り下げてあげることです。私たちは、方法論の前にある、子どもたちの興味を如何に引き出すかを常々考え、アクティビティを設計しています。
やってみたいという興味と、そうして得られた知識をもとに、手で触れられる「現実」となった自分の楽器に、侑誠君も満足げでした。

fusion360でのモデリング。スケッチから慎重に丁寧に制作していました。

3Dプリンタの出力はやりかたを教えて、3D プリンタも自分で設定して、自分で出力しました。

 

電子回路の設計や、プログララミングは手伝った部分はありますが、ほとんどは侑誠君自身の力で完成させました。

 

受賞と、認めることの大切さ


エントリー完了から、しばらくして送られてきた受賞を知らせるメールを見たときには驚きました。と言うのも、侑誠君がエントリーした「未来の楽器」の対象は中学校1年生から高校3年生まで。知識量も経験も圧倒的に少ない状況の中で、まさか受賞できるとは本人も考えておらず、その喜びもひとしおだったようです。
授賞式では、普段「人見知り!」を公言する侑誠君が、楽しそうにその他の受賞者と会話している姿が印象的でした。もちろん、授賞式という華やかな場所にいる高揚感はあったと思います。けれど、彼を饒舌にした最大の理由は、自分の思いや考えやアイデアが「認められた」ことに他なりません。
こういった形で賞をもらえる事は、非常にラッキーで、なかなかあることではありません。しかし、彼らを認める事自体は、特別な機会がなくても、普段の生活を送る中でいつでもできることです。褒めるのではなく、対等な関係として、その思いや考えを「認める」こと。そうすることで、子どもたちはより自由な発想や考えを持てるのだと改めて思える出来事でした。
侑誠君、おめでとう。これからも楽しく遊ぼうね。


具体的な作品制作の過程は、侑誠君自身がかいた記事(http://fabble.cc/onoyusei/floatgyration)があるので、是非ご覧になってください。