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開催レポート【2023/11/13】 全国の事例から見る、交通まちづくりの進め方〜「自治体におけるデータ利活用」最前線とその裏側〜

ウェビナー概要

地域交通・まちづくりの課題解決のためのデータ利活用を推進する
「交通まちづくりDX人材育成プログラム in 九州」の第1弾となる、オンラインセミナーです。
交通やまちづくりにおけるDX・スマートシティ化を推進する際に、必須となる住民との合意形成の進め方について、
客観的なデータをどのように利活用するか、オープンデータの整備やEBPMの効果検証の手法など、
データ利活用のスペシャリストに解説していただきます。

交通画像
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Event Report

自治体におけるデータ利活用~最前線とその裏側

一般社団法人リンクデータ 代表理事で、デジタル庁 データスペシャリストの下山紗代子さんから、「全国の事例から見る、交通まちづくりの進め方」をテーマに、自治体DXやスマート・シティを進めていく際に知っておくべきことや、データ利活用のお悩み解決につながる事例をお話しいただきました。

以下は、講演の要旨です。

データ活用により、一人一人がもっと尊重される社会に

まずは前提として、DXとデータとの関係を整理します。

いかに、トランスフォーメーション(変革)を進めるか

DX、つまりデジタルの力を使ったトランスフォーメーションを進めるために、「デジタル」の力は強力です。しかし、既存の仕組み・人・組織はそう簡単には変わりません。そのときに使えるのが「データ」の力です。

「データ」から、「デジタル」と「X」に向かって矢印が伸びています。デジタルの力を有効にするためには、まずコンピューターが扱える「データ」という形にする必要があります。また、データには、合意形成を進めやすくなる、人の行動変容を促すなどの力があります。トランスフォーメーションを起こすために大いに使っていきましょう。

1人1人が尊重される社会へのトランスフォーメーション

データを使うことで、一人一人がもっと尊重される社会にトランスフォーメーションできると考えています。従来の社会は、人が仕組みに合わせていかなければならなかった。しかしこれからはテクノロジーの発達によって、仕組みが人に合わせていく時代になるはずです。むしろ、そうしなければ、さまざまな仕組みが成り立たなくなっていきます。

例えば、支援を必要とする人への助成金交付の仕組み。従来は申請をした人に対して助成金を交付していましたが、データであらかじめ支援を必要とする人を特定し、助成金を振り込むことが可能になるはずです。

公共交通もそうです。これまでは公共交通の運行ダイヤに合わせて、人が行動していましたが、データを活用すれば、人の行動パターンに合わせて運行を最適化することができます。

また、トップダウンで物事を決めていた社会から、みんながデータを見て納得して決めていく社会になるとも思っています。

データ活用の重要性をイメージしていただくために、車の運転を例に出します。皆さんは、知らない道を、速度メーター・燃料データ・カーナビがついていない車で運転できますか?または、「自分は何の情報もなくても運転できる」と言っている人の車に乗っていたらどう感じますか?現状を正しく把握できない人には判断を任せられないと思います。

データと情報の違い

ここで整理しておきたいのが、このデータと情報の違いです。

データとは?
情報とは?

データはコンピュータ向けに使うもの、情報は人向けに伝えるもの、と整理すると分かりやすいでしょう。

情報⇆データ 双方向に変換可能

ワークショップの開催日時・場所・参加登録者数を例にみてみると、データと情報はこのように双方向に同じ意味を持った形で変換できます。それならば、データにするメリットはなんでしょうか。

データ化することで 他のデータと組み合わせられる

まず他のデータと組み合わせて、分かりやすく状況を把握できるようになります。

例えば、ワークショップごとの参加者数の比較、当日の参加者数と事前の登録者数の比較などができます。

データ分析=データから現状把握や判断に使うための情報を引き出すこと

そしてデータを組み合わせることができると、新しい情報が引き出せる状態になります。例えば、各ワークショップで一定のキャンセルが発生していたら、キャンセル率を算出します。

このように、現状把握や判断に使うための情報を引き出していくプロセスをデータ分析といいます。データ分析のコツは、このDIKWのピラミッド構造を意識しておくことです。

ポイント:D・I・K・Wのつながりを意識する

情報工学の分野で古くから使われている概念ですが、上に向かって価値が高まっていきます。データだけでは意味を持ちませんが、データを処理することで情報になります。そして、情報を蓄積して関連づけていくと規則性や傾向が分かり、知識になります。さらにこの知識を活用して判断ができる状態になると、知恵と呼べるものになっていきます。データ・情報・知識は過去のものですが、知恵は未来に向かって使えるため、一番価値が高いのです。

DIKWモデルに当てはめた例

先ほどのイベントを当てはめてみると、このようになります。

数値を使って、いかに客観性を高めていくかということがポイントです。

データをどう活かすか

数値を使うと客観性が高まる

こちらは私が実際にご相談をいただいた事例です。

ある市の救急隊員が、配属先が変わってから明らかに業務負担が増えたことを上司に相談したのですが、「気のせいだろう」と理解してもらえなかったそうです。そこで、市内の隊員1人当たりの出動件数を算出してみると、隊によって最大7.75倍の差がありました。このデータを添えて、もう一度相談してみたところ「これは、配置を考えなければいけない」ということになったようです。

数字は言葉よりも解釈の幅が狭いので、解釈の齟齬が起こりにくいのが特徴です。うまく活かせると、認識のすれ違いを減らす効果が期待できます。

様々な分野で、データ分析結果が、経験や勘を超えてきているという例が報告されています。

有名な例は、アメリカの犯罪発生予測システムです。過去の犯罪情報を蓄積したデータベースで、いつ・どこで犯罪が起こりそうかを機械学習で予測しています。

データ分析結果が経験やカンを越えた例:PredPol(米国の犯罪発生予測システム)

バルセロナ市の、データで根拠を示すことで合意形成を進めた例も有名です。交通量の多さによる公害が課題になっていたバルセロナ市が、市民のQOL向上に注力するために、交通規制をかけることにしました。

データで根拠を示すことで合意形成を進めた例:スーパーブロック構想(バルセロナ市)
From JUNCTION to SQUARE

どうやって合意形成を進めたのでしょう。

バルセロナ市はスマートシティとしても大変有名な都市です。街中にさまざまなセンサーを設置しており、あらゆるデータが取れている状態でした。それらのデータを使うことで「この計画が進んだ場合、現状起きている問題がどれほど改善するのか」ということについて具体的な数値で示すことができました。市民一人一人にとってのメリットを数値で説明したことで、合意形成が進んだのです。

データで根拠を示すことで合意形成を進めた例:スーパーブロック構想(バルセロナ市)

このようにデータで根拠を示して合意形成を進めることは、今後の社会に非常に必要なことだと考えています。

これからの社会に必要なのは、合意形成のためにデータを使うこと

先送りにしてきた様々なことを決断しなければいけない時代になってきています。「関係者の利害が異なる中で協議してもまとまらない」ということはよくあるはずです。

そこで、定量データを使って認識合わせをした上で、この先どうするべきか話し合っていくという、合意形成の進め方が重要になっていきます。

進む「データの民主化」

今、データの民主化が急速に進んでいます。

データの民主化

さまざまなデータがインターネット上に公開されていて、簡単にアクセスできるようになりました。さらに、データを解析するためのツールも充実してきています。データをある程度用意してツールに流し込むだけで、自動で解析したり、自動で可視化したりできます。

行政においてもデータの民主化は進んでいます。

行政組織においても進む データの民主化:神戸市の例

神戸市では、行政データや公的な統計データを分析・可視化できるダッシュボードを全庁で共有しています。これらのデータを活用することで、これまでより早く判断し、柔軟に動ける体制になってきているそうです。

これまで、「データは新たな石油である」と言われてきましたが、ちょっと古くなってきた感覚があります。これからは「データは新たな土壌」であるという考え方がマッチしそうです。

Data is the new soil. データは新たな土壌である.

公的機関のデータを整備して、みんなが使える状態にすることで、新しい価値や新しいコミュニティが育っていくのではないかと思います。

QAセクション

Q

交通量調査が人からAIカメラに変化していく中で、AIカメラを活用したまちづくり・人流データ活用事例などがあれば教えてください。

A

私が関わった交通量調査の事例は、札幌の地下歩行空間です。赤外線センサーを配置することで、人の通る方向を計測できるようにして、どの時間帯にどの方向に通過するかを分析しました。

商店街などではカメラがよく使われています。AIカメラを使うと、通行者の属性がある程度判定できるので、「この層を取り込むには、どの時間帯にセールをしたらいいか」などの戦略を立てられます。

重要なのは、まず目的を定めること。その上で必要なデータを定義し、収集・分析をする流れになります。

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