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開催レポート【2024/1/15】 全国の事例から見る、交通まちづくりの進め方〜「貨客混載」最前線とその裏側〜

ウェビナー概要

地域交通・まちづくりの課題解決のためのデータ利活用を推進する
「交通まちづくりDX人材育成プログラム in 九州」の第3弾となる、ウェビナーです。
国土交通省の規制緩和に伴い、人と物を同時に運ぶ「貨客混載」が注目されています。
運送業界の人手不足解消や地域活性化に寄与する一方、多くの制約をクリアしつつ、
交通・物流事業者の協力が必要となる、まさに「共創」を体現したような事業です。
今回は、貨客混載を実施する神戸市の事例を通じて、そのメリット、デメリット、
今後の展望などについてお話しいただきます!

交通画像
交通画像

Event Report

貨客混載の取り組み

神戸市は既存のバス路線を活用し、都市部と郊外との地域間交流を促進するための貨客混載事業など持続可能なまちづくりに取り組まれています。神戸市都市局駅まち推進課の郡佑毅さんに、導入の経緯やメリット、課題などをお話しいただきました。

以下は、講演の要旨です。

人口減少に適応したまちづくりを目指す

神戸市は兵庫県の南東に位置する政令指定都市で、面積は517キロ平方メートル。人口は2011年の154.4万人をピークに減少し、推定人口は現在150万人を割っております。

こちらが神戸市になります。海と山に挟まれた起伏に富んだ地形で、坂が多いのが特徴です。最寄りの公共交通までの移動が大変な地域もあります。

地形

こちらは、神戸市の公共交通網です。

公共交通網

既成市街地を、JRや私鉄などの鉄道網が東西に結んでいます。この既成市街地と郊外の市街地は鉄道で結ばれており、バス路線が補完しています。

人口集中地区

こちらは人口集中地区の変遷です。市営地下鉄の発達に従い、住宅団地が整備されています。それに伴い人口が増えていきましたが、2011年をピークに人口は減少しています。

特に郊外のニュータウンでは高齢化や若者世代の流出が進んでおり、持続可能なまちづくりが必要です。人口減少を止める事は難しいですが、減少を少しでも抑制し、適応していくことが大切だと思います。

新たなライフスタイルへの対応、豊かな暮らしの実現のためには、都市部と農村部の人の交流が活発に行われることが重要と考え、貨客混載の取り組みを進めています。

物の運搬が、路線バスの新たな収入源に

それでは貨客混載について説明させていただきます。人口減少、少子高齢化の進行によって、郊外を走る路線バスの輸送需要が減少しています。また、郊外のニュータウンなどでは、スーパーなどの生活利便施設の撤退・つながりの希薄化による地域コミュニティの衰退も懸念されています。

貨客混載は、路線バスが物の運搬という新たな収入源を得ることで、路線を維持し、地域の足であり続けられるようにしようという取り組みです。地域住民にとっての生活の充実、地域コミュニティーの活性も目的としています。

貨客混載の取り組み

大きく3つの取り組みが進んでいます。

1つ目は移動販売です。西神中央駅という駅前にある「エキソアレ」というショッピングセンターから商品を発送し、郊外団地に販売しています。

2つ目は予約販売による商品配送で、同じく駅前のショッピングセンターから予約商品のみを郊外団地に運びます。

これら2つは実証事業という段階です。

3つ目の野菜配送は、逆に郊外から駅に向かう路線バスを活用します。JAの直売所から駅前の飲食店に野菜を運んで納品する仕組みで、すでに民間事業として本格運行がスタートしています。

事業主体はこちらです。

事業主体

本事業は令和4年度から開始し、地域の路線バスを運行する神姫ゾーンバスが、運行サービス提供主体となっております。

このプロジェクトの共創パートナーは、親会社である神姫バス、兵庫六甲農業協同組合、ショッピングセンターを運営する双日株式会社、我々神戸市の4者です。神戸市は、異業種の事業者や、地域の方との調整を行うコーディネーター役を担っています。

神姫バスは先行して他都市で貨客混載を実施されているため、アドバイザーとしての役割も果たしていただきました。

こちらが実施地域です。

実施地域

移動販売と商品配送は、住宅団地である西神ニュータウンと月ヶ丘団地で実施しています。周辺には農村地域が広がり、野菜は県内最大級の農作物直売所から配送されます。

路線バスの移動販売実現に求められる条件

こちらは移動販売の走行ルートです。

移動販売(出張エキソアレ)走行ルート

昨年度は10月から5ヶ月間の毎週水曜、本年度は6月から6カ月間の隔週水曜に、2時間ほど販売しました。実施頻度を減らしたのは、参加店舗の負担軽減です。販売員に同乗してもらう必要があるため、人繰りや人件費の負担が大きいということでした。

平均来場者数は昨年度は約60名、今年度は約50名です。

バスを停める場所は市所有の駐車場で、団地に必要な施設を集積した地区センター内にあります。コープミニや集会所、広場も整備されています。

実施日の水曜日は、従来から集会所の定期イベントが開催されていた曜日に合わせました。

この移動販売の実現には、さまざまな条件がそろう必要があります。

まず、販売のために長時間駐車するため、終点でなければなりません。スライドの地図の真ん中にバス停(終点)とありますが、本来の終点はこの矢印の先にある営業所です。路線変更の申請をしていただき、終点を変更しています。

また、今回は、市の駐車場を使うことで駐車スペースも確保できました。乗客が多い混雑路線では難しいでしょう。さらに販売にあたっては、地域住民や近隣店舗の協力・理解を得る必要もあります。

バスの改装・ラッピング

移動販売に使っているバスのラッピングと改装状況の写真です。

車内後方の乗客スペースを店舗として使えるように改装しています。貨客混載の事例は各地で増えてきていますが、路線バスを移動販売用に改装するのは珍しいそうです。

バスのラッピングのほか、実施日に合わせてチラシを配布し、のぼりを立てるなどして、地域の方にアピールしています。

こちらが実施状況の写真です。

実施状況(出張エキソアレ)

参加店舗は多いときは7店舗。本年度の平均は3~4店舗です。

商品は、少し高級な食パンやぶどうパン、お弁当、和菓子、レトルト食品などの食品が人気です。商品については、敷地内のコープミニに事前に説明し、商品がなるべくかぶらないように配慮しています。またコープミニとは、お客さんに互いの店を巡回してもらえるようにポイント券・お買い物券配布などの連携もしています。

予約販売には地域住民の協力が不可欠

続いて予約販売による商品配送について。

こちらは本年度から事業を開始し、実施日は移動販売をしていない第2・第4水曜日です。

商品のみの配送で販売員を乗せる必要がないため、店舗負担は軽くなります。また予約商品のみを配送しますので、売れ残りも発生しません。

ラッピングバスではなく、通常の路線バスを使用し、商品は車椅子を固定するスペースに乗せて運びます。商品はバス停で渡しますので、路線変更も必要ありません。

商品配送(予約販売)の流れ

店舗側は予約商品をコンテナに詰め、出発地のバス停に運びます。配送した商品は、地域福祉センターの方が受け取り、保管センターに運びます。購入者は保管センターで商品を受け取る流れです。お分かりの通り、地域の方の協力が不可欠な仕組みになっています。

当初では移動販売と同じく11月までの予定でしたが、地域から継続の要望の声があり、店舗や事業者とも調整できたため、2月まで延長することになりました。現在、本格運行へ移行するための調査を実施しております。

続いて、野菜配送です。

野菜配送の流れ

昨年度10月から実証事業を開始し、事業化のめどが立ったため、令和5年3月から本格運行しています。配送日は、月曜・水曜・金曜です。

農村部で採れた新鮮な野菜を提供する機会の創出、地産地消にも貢献する取り組みだと考えています。

野菜は直売所からバス停に運ばれ、バスで終点まで配送。店舗の方がバス停で配送された野菜を受け取り、店舗に持ち帰ります。

野菜配送を利用している店舗は従来からJAと取引があり、以前は車両で野菜を配送してもらっていました。路線バスによる配送に切り替えたことで、店舗にとっては配送コストが大幅に削減でき、JAも配送の人手がかからなくなります。バス事業者にも配送料が入りますので、3者ともメリットがある取り組みです。

移動販売車を活用した出張販売(実証事業)

また、貨客混載につなげるための実証事業として、移動販売車を活用した出張販売も始まりました。

バスによる移動販売は実施できる条件が限定されます。そこで、移動販売車を使い、まずは地域ニーズを把握しようという事業です。駅前のショッピングセンターの商品を、4地域の近くに福祉センターがあるバス停で販売しています。

実証状況 移動販売車を活用した出張販売(実証事業)

この実証事業を通して、今後の配送につなげられるか検討を進めているところです。

Q&Aセクション

Q

貨客混載にあたり、バスの車両稼働率の低下、運転手の拘束時間増加などのマイナス面はありますか?

A

バスの事業者からはマイナス面は聞いていませんが、一事業だけで見ると、採算性・コストパフォーマンスという点では効率的ではないかもしれません。しかし、公共交通を維持し、地域に貢献するという考えのもと、先を見据えて取り組んでいただいていると思います。

Q

利用者はどのように注文しているのでしょうか?

A

地域福祉センターの管理を担っている団体に注文書が置いてあります。利用者が締め切りまでに記入する形です。

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