教育方針
テックパークで
私たちが目指すもの
社会と自分が地続きであることを伝え続ける
子どもたちは「何が楽しいのか?」を探す天才です。常に遊ぶことに意識を集中させ、楽しい!とか嬉しい!といった、一人ひとりの心の中にある幸せの感情を素直に受け止めて成長していきます。しかし、楽しいことや嬉しいことの反対には、苦手なことや難しいことがあります。何かを達成したいと思っても、ただ好きなことだけをやっているのでは上手くいきません。目的に向かう中で、必ず、苦手なことや難しいこと、理不尽なことにも出会うでしょう。ただ、必死に考え、試行錯誤しながらやり遂げたその先に、今まで以上の大きな幸せを得ることができると理解して、行動したときの達成感こそ、学びの結果です。それらの経験は、子どもたちの勇気を育て、壁を越えようとする力を授け、そして、昨日までの自分を超えていきます。
また、そうして自分の限界を知ることは、「誰かを必要とすることの大切さ」や「誰かに必要とされることの大切さ」のもとになります。
人間社会では必ず、人は人に支えられて生きています。大きな自然という次元で見れば、わたしたち人は、個々それぞれが意思・感情・目的を持つことができる、希少な生き物です。だからこそ、家族やテックパークの仲間と積極的に関わりあって、「人から大切にされること」と「人を大切にすること」を実感してほしい。そうして生まれる「人の役に立ちたい」という行動こそが、大人の社会で重要な「信頼」であること。その経験の積み重ねが一人だけではやり切れない、大きな可能性を実現する力になるということを、知ってほしいなと思っています。
わたしたちグルーヴノーツは、今必要なことの本質を見極め、必要なところに最適なテクノロジーを使い、人々の生活を支えて豊かにしていくために、テクノロジーカンパニーとして存在しています。
足りなくなる人材のためではなく、自分自身のために、身近な大切な人たちのために。自分の置かれている現状を理解して、テクノロジーをどう使うべきか?を考える。そして、見つけた課題をわたしたちと一緒に、社会に実装していける子どもたちを育てていきたいと思っています。
株式会社グルーヴノーツ
取締役会長
テックパークが
約束すること
テックパークは、子どもたちがそれぞれの個性に合わせてテクノロジーを楽しむ場です。
そしてまた、生活の基礎習慣づくりを
する場でもあります。
ご家庭でも学校でもない第三の学び場としてテックパークがあるために、私たちはその活動の中で次のことをお約束します。
1.子どもたちの個性
こそを育てる
テックパークでは、プログラムを上手に書くことや、型通りに課題をこなすことを子どもたちに求めません。その子がその子らしくテックパークで過ごせているかどうか、その一点を注視しながら、毎日の運営やアクティビティの開発に取り組んでいます。
例えば、1つのリンゴを前にして、見た目の綺麗さに心が動き、赤さや形に目が行く子もいるでしょう。また、りんごの味を思い出し、美味しそうだと思う子や、一冊の本の知識から、リンゴが落ちていく速度に心を奪われる子もいるでしょう。個性は、みずみずしく成長していくものであり、成長の可能性は、子どもたちが出会う様々な人や言葉、知識で大きく変わってくるでしょう。
もちろんつまらない先入観にとらわれる必要もありません。男の子が手芸に没頭してもいいし、女の子がロボット工作に興味を持っても良い。私たちは、趣味嗜好や興味の対象など、子どもたち自身が持つ個性を1つの枠に収めず、発達段階等をふまえながら、それぞれの子にあった方法で、できる限り楽しく、できる限りのびのびと、テクノロジーを学んで貰うことを大切にしています。
2.創造の中で見つかる
自己表現としての
テクノロジー教育
テックパークは、プログラミング教室ではありません。もちろん、アクティビティの中でプログラムを教えることはありますが、その習得自体を目的とする事はありません。夢中になることや好きなことは、日々の経験の中で、常に変化していきます。最初から、好きなものや夢中になれることを明確に持っている人はいません。実際に手を動かし、経験を重ねる中で、それが好きかどうか、興味を持てるかどうかに、はじめて気づくことができます。
「飽き性」といわれる人は、実は、短い時間で夢中になれるものを見つけ、探求し、自分の中でなにかを獲得したあと、次々と夢中になれるものを探していく。つまり、経験の連続性を生み出して、広い世界を渡り歩いています。逆に、一つのことにずっと夢中になれる「凝り性」といわれる人は、一つのことを深く、時に高く、変化の連続性を生み出し、深い世界を探求していきます。
私たちは、それぞれの子が、それぞれ“今”夢中になっていること、“今”興味を持っていることの中で、自分の思いや考えを表現し、それを他者に伝える方法として、テクノロジーを使いこなして欲しいと考えています。
素晴らしいアイデアやインスピレーションを得ても、それを自分の頭の中から取り出して人に伝える方法を知らなくては、アイデアが形を持つことはありません。文字や言葉、グラフィック、映像、音楽、ダンス、アートなど、その方法は様々ですが、思いや考えに輪郭をあてがう作業は、人と関わりながらモノゴトを創る上でとても重要です。
よくよく考えれば、私たちはそうして誰かの頭から取り出された沢山のアイデアやインスピレーションと絶えず触れ合っています。朝起きて歯を磨くためにひねる蛇口や、歯ブラシの柄、歯磨き粉のパッケージ、口をすすぐコップの取っ手など、それらの全ては作り手の思いや考えから出発し、スケッチや設計図を経て実体化されたものです。
そうして考えたとき、テクノロジーは、実はコミュニケーションのための手段であることに気づかされます。テクノロジーとは、「こういう事をしてみたい」「こうだったらもっと良くなるのに」そういった思いや考えを、形にして、他者に伝え、実体化していくための方法です。言葉がいいのか、音楽がいいのか、ビジュアルが良いのか、自分の思いや考えを伝えるために存在する無数の選択肢のひとつに、プログラミングや、アート、ファブリケーションなど、テックパークで学んだ方法が加わることを願って、私たちは今日も子どもたちにテクノロジーとの関わり方を教えています。
3.自他の違いを認めて
共創する力を
一般的にプログラムというと、エンジニアがコンピュータの画面とにらめっこしながら黙々と作業しているイメージを持つ方も多いでしょう。しかし、この世に流通するソフトウェアやゲームを見てみると、驚くほど多様な考えや背景、技能を持った人たちが関わり、1つの製品、1つの作品が作られている事に気がつきます。
普段、利用しているアプリひとつとっても、アプリ自体の制作は一人でできたとしても、一人でできるように作られた開発環境や、通信に必要なネットワークそのものなど、アプリを動かす上で必要なものはたくさんあり、それをたったひとりで作り上げていくには限界があります。なにか新しいものを作ろうと考えたとき、なにか大きなものを表現しようと考えたとき、私たちは、必ず自分以外の誰かと思いやアイデアをシェアし、時には議論しながら、その完成に向けて足並みを揃えていなくてはなりません。
テックパークでは、自分と違う考えや背景を持つ人たちとうまく関わりながら、1つのアウトプットを生み出す力を養うため、積極的にグループワークを取り入れています。ここで重要なのは、自分と違う考え、違う価値観を持つメンバーとも協力し合えることを体感的に学ぶことです。また逆に、自分の考えが他の多くの人と違っていても、そういう輪の中でも孤立せず、人と関わり合えることを知ることです。
人には個性があり、全員がそれぞれ違った物の見方や考え方をしています。どれだけ議論を重ねたとしても、どれだけ長い時間を共にしても、それらがぴったり1つに重なり合うことはありません。人が自分と違うこと、そのあたりまえを知っていれば、全く違う価値観や背景を持つ人とでも「明日またあなたに会いたい」とお互いに思えるような関わり合いをつくり出すことができるはずです。
自他の違いを認め、乗り越えた時、私たちは、自分が想像しうる以上の未来の中にその身を置くことができます。異質なものと関わり合う力、その境界線を超える勇気は、これからの未来をつくる上で最も重要な力であると信じています。
4.将来ではなく今すぐ
社会実装する
社会に出るという言葉がありますが、この世に生まれ落ちたその瞬間から、その子はもう社会の一員です。泣けば両親がミルクの世話や、おむつの交換、あるいは抱きかかえてあやしてくれるかもしれません。範囲は限定的かもしれませんが、その一挙手一投足は、身の回りの小さな「社会」を確実に動かしています。立ち上がり、歩きだして、言葉を話せるようになれば、近所の人たちに挨拶をしたり、同年代の子どもたちと遊んだり、徐々に自分が影響力を持つ社会の範囲は広がっていきます。
学校教育は社会にでるための準備期間だと言われることもありますが、実際の私たちは、はじめからおわりまで、ずっと社会の中で人々と関わりながら生活をしています。
テックパークでは、今の自分の行いが社会と地続きであること、自分の作ったものや表現が、実際の社会に影響を与えているのだという事実に子どもたちが気づくことができるよう、様々な企業とのコラボレーションや、作品コンテストへの応募なども積極的に取り組んでいます。
実際に、ある男の子は 3D プリンタで作った「未来の楽器」が評価され、ある大学の一次試験で免除認定、ある小学生の女の子が作った動画は全国規模のフェスティバルで特別賞に選ばれたり。また別の小学生の女の子は、わたしたち大人とともに、AIのプロジェクトに参画し、世界を代表する企業の幹部たちの前でプレゼンテーションをしたり。大人になるまで待たなくても、「やってみたい」と思ったことをやった結果が、実社会に影響を与えうることを、子どもたちにわかってもらえたら嬉しいなと思っています。
年齢、性別、国籍など、人を隔てるボーダーやギャップは数多く存在しますが、それぞれの中に芽生える「やってみたい」という気持ちに、境界線も、限界も、優先順位もありません。私たちは、そうやって子どもたちの中に生まれた気持ちを実際に形にしてみること、そうして形にしたものが社会への影響力を持つのだと体感的に学んでもらうことで、漠然としたイメージのある社会というものの中に、確かな実体を作り出せる人に成長してほしいと心から願っています。